【ATOM⑫】ロボットと錯視

かえつ有明ブログ

錯視は、人間の脳細胞が複雑に組み合わされたニューラル・ネットワークの特性から生じる現象です。
実際、一部の錯視が生じる理由についてはニューラル・ネットワークの構造から説明できることが示されています。
その錯視現象が人類が生き延び繁栄するのに資する形で主として三次元空間を素早く正しく認識できるように、極端に表現すれば、三次元空間の認識に特化した形で視覚系が発展してきた結果である、という説について先回触れました。私自身はこの説に十分に納得しています。

断定してよいかどうか自信はありませんが、漫画・アニメの主人公である鉄腕アトムやATOMには錯視の現象は無い、と思われます。
これからは人間と変わらない非常に高度なロボットが現実の世界で活躍する時代になります。それらの視覚処理系には高度なAIシステムが使われるでしょう。
それに人間にある錯視と同等の現象を組み込むことは技術的には可能です。しかし、その必要性があるかどうか、少し考えて見ましょう。 

錯視が効果的に使われている例は身近にあります。最も身近なものはお化粧でしょうか。
下図をご覧下さい。上段はデルブーフ錯視と呼ばれ、良く知られた現象です。
左側は外円に影響されて内側の円が右側の円よりも大きく見えます(実際には同じ大きさの円)。
中段および下段をご覧下さい。
右側は目の輪郭を表すものとしましょう。左側は右側の目の輪郭とまったく同じものに、線を追加しただけの図形です。
左右の目の輪郭を比べてみて下さい。左側の方が少し大きく見えませんか?二重まぶたや睫毛は見かけの目の大きさを少しですが大きく見せる効果があるわけです。
大きなパッチリとした目に見えるように、手術で二重にしたり着け睫毛をつけたりしますが、その理由は錯視があればこそ、と言えるかもしれません。
前回に触れたもの以外にも、横断歩道が錯視によって盛り上がって見えるように路面をペイントし、車の運転手がスピードを思わず落とす効果を期待して歩行者の安全をはかる、などの利用方法もあります。錯視を逆手に有効活用しているわけです。

 

ロボットには色々なタイプが存在します。ものづくりの工場を見れば、人間が手作業で行なっていた部分の多くが既に機械化されています。
そこで使われている自動機械は産業用ロボットと言われます。部屋の中を自在に動き回って掃除をするロボットも一般家庭に普及してきました。
これらには錯視は無いことが条件になると言えるでしょう。物体をあるがままに精度よく認識できることが正確に作業を遂行する上で必要となるからです。
錯視があれば、正しい作業に支障をきたすことになりますね。
一方、癒し系のロボットや生身の人間と同等にコミュニケーションをとりながら協働作業を行うような人型ロボットであれば、人間と同じような感情や感覚を持ち、固有の個性まで期待することにもなるでしょう。お化粧をして変身(?)したときに、「ワーッ、きれい!」と叫んでくれたらうれしいでしょう。
癒し系のようなロボットであれば錯視の機能が備わっている方が望ましい、と言えるかも知れません。
一方、能力的・機能的に人間のレベルをはるかに凌駕するスーパーマン的存在としてのロボットの視覚系は正確無比であることが最優先となるでしょう。
錯視は現実の世界を正しく認識する妨げになるからです。
したがって、錯視のない視覚系を持つロボットや人間のように錯視現象のあるロボットなど目的・用途に応じた多様なロボットが共存する、ということになるのではと思います。
皆さんはどうお思いですか?

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