【かえつ有明2020】~石川校長のビジョン(14)~オルセーリマスターアート展

DATE : 2015/8/22

今年もオルセーのリマスターアート展が始まりました。

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昨年初めて実施したときは、私学関係者からも驚きの声が聞かれていましたが、その後同様のアート展をする学校も出てきて、このようなスクールミュージアムの試みが少しずつ浸透しつつあります。学校がアートを感じる場として受け入れられるというのは嬉しい限りです。

私自身印象派絵画が好きで、このオルセー展を楽しみにしている一人です。というのも、印象派というのは時代の変わり目に出現してくるというか、むしろ時代を変えていくようなところがあるのですね。ちょうどこの時代に写真が登場してくるということもあり、手法的に写真とは異なる描き方を模索していったということがあります。実験的な描き方が試みられるというのは、そういった当時の状況も関係しているでしょう。

さらに、王様や貴族がパトロンとなって芸術家に絵を描かせていたような時代とは違って、他人の要求やニーズにしたがうのではなく、自分の描きたいものを描くということがはっきりしてくる時代でもあります。だから、描く対象もそれまでは宗教的な寓話だったりモチーフだったりが多かったわけですけれど、印象派の頃には、風景とか普通の人物などが描かれるように変化してきます。

そんな風に考えてみると、当時の産業社会や個人主義が広がっていく時代との関わりが感じられて、とても面白いですね。昨年オルセー展を開催したときに、館長を務めて以来、何かと美術館を訪れる回数も多くなり、すっかりアートにはまってしまっているのですが、なかでも印象派というのは、それまでの流儀を壊していった革新性という意味で、非常に心が揺さぶられます。

売れるかどうかよりも描きたいものを描くというアーティストの生き方がいいですね。描いたものが受け入れられるかどうかは関係ないという、潔さというか人生を賭けている凄みというものを感じます。そうかといって、印象派の手法がそれまでのアートを無視しているかというと全くそうではない。手法についても歴史についてもかなり見ているし、あるいは日本の浮世絵などという、よく知らない国の文化まで取り込んでしまう。

要するに、すでにあるものをクリティカルに眺めることで、新しいものを創り出していくわけです。一部の目利きの画商や評論家たちが、この新しい芸術の流れを高く評価したということも大きいですね。当時の芸術アカデミーが酷評する中で、結果的に印象派の流れを大きくしていけたというのは、自分たちがよいと思うものを徹底的に推し進めようとした信念なのだと思います。

そういう感性を信じて、従来のものをクリティカルに捉えていく。そういう生き方は現代の私たちにもいろいろな示唆を与えてくれます。

ビジネスでも、市場が求めているものを追いかけるのではなく、自分がよいと思うものから発想することが大切だとよく言われます。また、創造的なアイディアは、無から有を生み出すということではなく、従来のものをクリティカルに眺めていくことでヒントが生まれるなどということもよく耳にすることです。

この夏休み最後の思い出として、ぜひ多くの人に来校いただき、印象派のスピリットを感じてもらえたら嬉しいですね。1回見たらそれで終わりではなく、 2回でも3 回でも見てほしい。知識が増えればそれだけ楽しみが増えるのがアートです。うちの生徒がアートコンシェルジュを務めるので、ぜひそのガイドを聞いてもらいたいと思っています。

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