【かえつ有明2020】~石川校長のビジョン(2)~未来からの留学生(1)~子どもたちの生きる未来~

DATE : 2015/4/30

未来からの留学生(1)

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今回は「未来からの留学生」というタイトルで話をしようと思います。言うまでもなく、ここでいう留学生は、今を生きている子どもたちのことを指しています。

バック・トゥ・ザ・フューチャーという映画がありましたが、あの映画で未来が描かれているPart2は2015年をモデルにしていると聞いたことがあります。あの中ではスケートボードが空中に浮いたりする未来が描かれていて、もちろん、現実化したものもあれば、していないものもあるのですが、あの映画が作られたのは、もう30年ほど前のことなのですね。

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今私たちは2015年を生きていますが、これから30年後の未来というのは、2045年なわけですね。世間で2045年問題ということが言われていて、このころには、AIが人間の知能を超えると言われています。

また別の予測では、近い将来において、現在の子どもたちの65%は今存在しない仕事に就いていると言われています。
子どもたちになりたい仕事を聞いてその仕事についての情報を与え、そのための適性を磨いても、その仕事はなくなってしまっているかもしれないという、なんとも夢のない、暗くなってしまうようなテーマなのですが、逆に考えると、人間ってそもそも何なのだということが突きつけられているわけですね。そういう文脈で学校教育を考えてみようと思います。

いくらアマゾンがクリック一つで買い物ができるような便利な仕組みを作っても、相変わらず、近所の本屋に立ち寄る人はいるわけです。そういう意味では、人間は人の関係の中で安心感を持ちたいのですね。人間ってロジカルに正しいものだけを選ぶわけではない。

たしかに、AIはビッグデータを駆使して人間の行動をすべて解析した上で、あなたの性格ならこういう仕事が向いているでしょうなどと、確率的に正しい答え提示するかもしれません。現在でも、どこのレストランがいいという口コミ情報や星の数がいくつだなどという情報をもとに、行動を決定していますから、この傾向はますます強くなるでしょう。

しかし、それですべて人間が自分の行動を決めるかというと、決してそうではないわけです。嗅覚というか感性で決めていく部分が残っていく。

ロジックばかりではなく、こういった感性というのも学校教育に組み入れられていくのかなという気がするのですよ。

西洋的な考え方で、人間が作りしものの探求をアートで、神が作りしものの探求をサイエンスと分けるなら、サイエンスの中でも、一番面白くてよく分からないものは人間と宇宙ですね。この前東大に合格した4期生の橋本くんも人間の脳か宇宙について研究したいと話していましたけど、究極ですよね、この二つは。いくら2045年になっても人間と宇宙は解明されていないだろうと思うのですよ。それは相変わらず人類の課題であり続けると思うわけです。
だからAI的にいくと、レストランに行けば自分の食べたいものや財産状況を把握されていて、黙っていても、ロボットがベストなチョイスをしてくれるかもしれないけど、人間というのは、時にロジカルだけでは説明のつかない判断をするでしょう。店員がそれまでの自分の嗜好とはまったく違う食べ物を出してくるかもしれないところが面白いわけです。そこで失敗するかもしれない。しかし、そういう失敗もまた楽しめる感性というか、こういうものは人が介在しないと面白くない。

そして、このようなことを楽しむためには、頭の中にリベラルアーツ的な蓄えがあった方がいいのです。ビッグデータで確率的に正しいことをチョイスして、効率的な生き方をするよりも、余分なものを楽しむ能力、それが豊かに生きるということなのではないでしょうか。それこそが学校教育に期待されるところであると思うのです。

 
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