【かえつ有明2020】~石川副校長のビジョン(11)~

DATE : 2014/12/6

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   今回は、本校の新教科「プロジェクト」に関するお話をしたいと思います。

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   そもそもプロジェクト型学習を私が知ったのは、海外のインター校などを視察していた15年以上前に遡ります。今でこそ日本国内で「プロジェクト型学習」とか「PBL」といった言葉を耳にするようになりましたが、当時はまだあまり知られておらず、「調べ学習」に近い意味でなんとなく漠然と捉えられていたかもしれません。

   もちろん調べることもプロジェクト型学習に含まれてくるでしょうが、本来プロジェクトというのは、前方に目標を設置するといった意味で、極めて目的志向的な学習だと言えます。ただし、その目標は、人に決めてもらうのではなく、自ら設定するところがポイントで、そこがユニークな教科だということができると思います。


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  私は幕末から明治にかけての時代が好きで、研究テーマにもしていたのですが、知れば知るほど明治維新というのは、日本の一大国家プロジェクトで、当時の人たちはみなそれに参画するプロジェクト学習の先駆者だったのかなと思うことがあります。

   どういう日本にしたいのか、どういう国家であるべきか、そういう問いかけから目標を掲げ、その実現に向かって、幕末の志士たちが必死になって知識を身につけ、議論していったわけです。医学はオランダよりドイツが進んでいるらしいとなれば、それを学ぶし、イギリスやフランスから自由主義的な思想を学びつつ、憲法はドイツに近いものにしていくなど、かなり綿密に国造りがされました。

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  あれだけの短い期間で国家をまとめ上げていったというのは、やはり目標が明確だったからだと思います。明確だからこそ知識をどんどん吸収していくわけです。時代が下るにつれて、悪しき教養主義的なものに陥って、ともすると知識をたくさん覚えること自体が目的となってしまう場合がありますが、知るということは本来、無上の愉しみであるはずなんですね。

   その知識がベースになって議論は活性化されます。知識というのは先人が積み重ねてきた宝の山だと言ってもいいでしょう。それを参照することで議論が前に進んでいくのです。ただし、ここで大切なことは、知識はシェアするものだということ、知っていることをオープンにすると同時に、知らないことを受け入れる精神です。知っている者が偉いという態度では、知識偏重の受験勉強から脱却できません。そういう中では、目的のない、またはせいぜい集団の中であるポジションを取るための勉強にしかなりません。



   目的を明確に定めて、そこに向かって知識を活用する。議論や対話を通して、目的を達成する。それがプロジェクト学習の基本だと思うのです。
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