【かえつ有明2020】~石川副校長のビジョン(5)~

DATE : 2014/9/17
  今回は本校が標榜しているリベラルアーツについて話をしようと思います。

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  これからの世の中で起こってくる問題は、従来の枠組みでは解決できないものばかりです。地球規模で見れば、環境問題やエネルギー問題、日本国内でも、少子化や高齢化社会の問題あるいは財政問題など、複合的な要因が絡み合い、解決の糸口すらつかめない。このことが若い世代に及ぼす影響というのは非常に大きなものがあると思います。我々大人は、何とか逃げ切り可能な世代に属しているかもしれないが、子どもたちはそうはいかない。待ったなしの問題なわけです。

  そういった未知の問題に対処する上で大切になるのが、リベラルアーツ的な学びです。というのも、今述べたような問題というのはいずれも対症療法的に解決できるものではなく、本質を見据えて他の人と協同しながら解決を図っていくものだからです。当然ここでのリベラルアーツというのは、ため込んだ知識をひけらかすような従来の教養主義的なものではありません。ましてや、性急に知識を求めることではあり得ない。言わば、普遍性を志向する態度だと言っていいでしょう。こういった態度が、やがて価値観の違う人とも通じ合えるプラットフォームを形成していくことになるのです。専門分野に進む前段階である中高時代に、このような人間形成をしていくことは非常に重要だと言えるでしょう。

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  本校の卒業生と話をしていると、自分が世の中に貢献できるかどうかということを学部選びや仕事選びの指標としているケースが多いと感じます。これは今の時代の特徴であるとも言えますね。つまり、人と比較して自分の相対的なポジションを求めるよりも、自分の価値観に基づいて、社会にコミットしていきたいと考える人が増えているのだと思います。

  そういう時代においては、真の自分を形成するリベラルアーツが重要になるのは当然です。リベラルアーツの歴史を古代ギリシアやローマの時代に遡っていくと、言語的な科目と数学的な科目に大別されますが、この二つが重要視されるのは、数学は普遍性を追い求める思考に通じますし、言語は人や社会とつながるための技術だからでしょう。現代の諸問題を考える上でも、この二つはとても大切な能力になります。

  大学入試改革の中で、文理融合や多面的な評価の必要性が叫ばれているのは、もっともなことです。問題はそれをどのように実現するかで、本校の場合はそれをサイエンスという教科でずっと実践してきました。そしていよいよ2015年度から、「プロジェクト」と「ランゲージアーツ」という教科をスタートさせることで、本格的なリベラルアーツ教育に乗り出すことになります。

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  知的好奇心を育むには、ただ放っておけばよいということではないはずです。興味を引き出す授業、そして先生の存在が欠かせません。テストや評価も変わらざるを得ないでしょう。本校の教員が今みんなで取り組んでいることは、そこに向けての挑戦です。私たち自身も変化し、学び合うことを通じて、生徒に新しい学びを提示していきたいと考えているのです。

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