【かえつ有明2020】~石川校長のビジョン(23)~自分を信じる力と人を支える力

DATE : 2015/10/23

先日、大村智さんと梶田隆章さんのお二人の日本人がノーベル賞を受賞し、お二人の偉業が様々なメディアで報じられました。その報道に接するたびに思うのは、自分の信じることを追求する姿勢の大切さと、それを支える理解者の存在です。

大村さんの亡くなった妻である文子さんは本校の卒業生だということもあり、特に興味深く報道を追いかけています。当時貧しい研究者だった大村さんとの結婚を猛反対される中、給料のほとんどが実験器具などの購入に消えて家にお金が入らなくても、そろばんを教えたりして家計を切り盛りして、夫を支えていたということです。

偉大な業績を残す研究者の周囲には、必ずと言ってよいほど、良き理解者の存在があります。いくら自分が好きなことであってもそれをずっと継続するためには、自分ひとりの信念の強さだけではなく、周囲の支えも必要だということなのですね。大村さんは、奥様からもらったという、「怒るな働け」という本校の校訓の入った額を今でも大切にしているそうです。

自分の人生を悔いのないものにするには、前回のビジョンでもお話したように、自分を信じる力をつけていく必要があります。しかし、自分を信じるためには、自分を支えてくれる環境の要因も大きいのです。

教育の中では、自己肯定感という表現をよく使いますが、日本の高校生はこの自己肯定感が非常に低いというデータがあります。他の人との比較の中で、偏差値という物差しで評価される環境が、自己肯定感を低くしてしまっている原因の一つだと考えられています。自分が秀でている、あるいは好きだと思える分野が見いだせないまま、機械的に進路選択をしているのだとしたら、非常に残念なことだと思います。

最近、ある女性のお笑い芸人のインタビュー記事を読んで、なるほどと思ったことがありました。彼女は東大からマッキンゼーに入社するという、誰もが羨むキャリアを捨てて、お笑い芸人として再出発したのですが、そのインタビューの中で「すごい人生より面白い人生に憧れてる」「誰かに勝ちたいというより、死ぬときに面白い人生だったと思いたい」と語っていました。

自分の生きるべき道は自分自身で切り開いていくことが理想ですが、最初からそれが簡単にできるわけではありません。様々な困難にぶつかったときには、周囲の助言者や協力者の存在が必要になります。

自分を信じる力を育てるために、お互いを認め合える仲間と出会える環境が学校という場なのだと思います。もちろん大学受験という現実から目を背けるわけにはいきませんが、自分の可能性を広げるために、他者との関わりの中であらゆることを学びに変えていってほしいと考えています。本校で進めているプロジェクト科という新教科は、まさにそんな学びを提供する教科なのです。

前回もお話しましたが、特にこれから高校受験をするという中学生には、受験偏差値だけでは測れない自分の可能性ということを意識して、うちに来てもらえればと願っています。

修学旅行先のロンドンより

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