今回は生徒の強みを引き出すというテーマについてお話してみようと思います。
従来、学校で重視されてきた学力というのは、早く正確に問題を解くということでした。
応用問題や発展問題といっても、やはり時間制限の中で、それまでに習得した知識を組み合わせて考えるタイプがほとんどです。定期テストと言えば、だいたいこのような学力を測定してきたわけですね。同じ製品を大量に作る時代ならば、PDCAサイクルの中できっちり管理できる能力があればそれでよかったのですが、これからの時代は、それだけでは十分ではありません。学校教育の中でどういうふうに学力を育てるかということが問題になってくるわけです。
基本的な生活習慣や社会性という面でも同じことが言えます。ルールをきちんと守って、人として正しい振る舞いが出来ることが大事だという考えが教育現場に根強くあります。もちろんこれはこれで間違ってはいませんが、きちんと何かをこなすことが苦手な生徒の中にも、「こんなことがあったら面白い」などと、ドラえもん的な発想をするのは得意な生徒がいるものです。
これからの社会では、イノベーションを起こすような発想力が求められているわけですから、現状で基本が苦手な生徒であっても、自分の得意な部分をもっと伸ばしていけばいいと思うのです。
これまでの教育では、段階を踏んで、基本から積み上げていくという方法を取ってきたわけですが、そのやり方だと、基本が苦手な生徒は、本領を発揮する機会がないままに基本ばかりをずっとやらされ続けるという結果になってしまいます。
弱い部分を強くしていこうという発想よりも、強い部分を引き出してあげることが必要なのだと思います。きっちりやることを重視するあまり、発想する力や楽しいと感じる心を押さえつけないようにしないといけません。「基本を積み上げないと創造力が身につかない」のではなく、それぞれ別々に育んでいこうと考えることです。今は基本が苦手な子も、自分の得意な部分が認められれば、やがて基本ができるようになるものです。
そんなふうに、育てる力の順番をもっと柔軟に考えてあげると多くの生徒がそれぞれの才能を発揮してくれるのかなと思います。基礎を積み上げていくばかりではなく、いきなり創造力、いきなり発想力という生徒がいたっていいじゃないですか。