思考力入試(再掲載)

DATE : 2016/1/31

今回は本校の入学試験の一つである思考力テストについてお話します。

本校で、「思考力テスト」の前身とも言える「作文入試」を初めて実施したのは4年前です。知識の量などといった、蓄積してきた学習成果をみるのではなく、入学後に伸びる潜在的な力や好奇心、あるいは自分の意見をきちんと言える力をみたいというのが理由でした。4科受験では測れないような才能を発掘できるのではないかと思ったわけです。

ちょうどサイエンス科にクリティカルシンキングの手法が浸透してきた頃だったこともあって、数名でも受験してくれればいいということで始めたわけですが、予想をはるかに上回る受験生がチャレンジしてくれました。そして毎年受験者は増え続けています。対策講座や試験の答案などから感じられるのは、自分の意見を論理的に伝える力を持つ受験生が増えてきているということです。改めて思考力テストの意義と手ごたえを感じています。

学校教育の現場で、思考力を育てることの重要性をしばしば耳にしますが、これがなかなか一筋縄ではいきません。自分が教員になったばかりのころによく思い悩んでいたことに、教員が生徒に張り付いて熱心に指導すればするほど、生徒の方は逆に自分で考えることをしなくなってしまうというジレンマがあります。そうかといって、すべてを生徒に任せきりでも、どこがテストに出るかといったことばかりに知恵を絞って、本質的なことを何も考えていないこともあるから厄介です。

ただ漠然と考えろといっても考えようがないし、問いを投げかけて思考のきっかけにするにしても、教員側であらかじめ答えが用意されている問いでは本当の意味での思考力を刺激することにはならない。鍵となるのは、考えるための方法を与えること、そして生徒が自らの興味に基づいた問いを設定することなのでしょう。

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ブルームという人のタキソノミーを導入して、サイエンス科を中心に、各教科の構造を「かえつ知のコード」という一覧表にまとめたことがありました。その時に、問いのレベルということに話が及んだのですが、今の入試問題のほとんどは、「~は何ですか」といった、知識に関する問いか、「~について説明しなさい」といった理解に関する問いですね。分析、総合、評価といった、高いレベルの問いはほとんど見かけません。

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日本史で言えば、江戸の三大改革などは典型的な例で、誰がどの改革を何年に行ったか、ということばかりが問われるのですね。これを知らないと、他のレベルの問いに行けないかのように考えられがちなのが不思議です。知識のレベルの問いは、ググれば出てくるわけで、そういうことよりも、現代の政策との比較をしたり、改革の成果をさまざまな面から評価したりすることの方が面白いと思うのですが、答えが複数あり得るからなかなかテストになりづらい…、テストにならない以上授業でも取り扱われない…といった悪循環です。

本校の思考力テストは、クリティカルシンキングの手法を取り入れた設問の流れになっていることと、答えを一つに限定しないという点で画期的なテストだと自負しています。もちろんテストである以上は、すべて正解というわけにはいきませんが、自分の意見を書くタイプの問題では、論拠や具体例がしっかりと書いてあれば、様々な意見が正解になり得ますし、比較対照したり、あるいは分類したりするような問題においても、自分なりの基準を明確に示した上で解答していれば正解となります。
解答者である子どもたちが自分らしさを発揮できるという点において、とてもユニークなテストなのです。

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