すでに知っている方もいらっしゃると思いますが、講談社現代新書から私の本が出ました。『2020年の大学入試問題』というタイトルです。このようなタイトルから、極めて受験対策っぽいものをイメージするかもしれませんが、決してマニュアル本のようなお手軽な内容ではありません。本校で行っている様々な取り組み、そして幹事として関わって来た「21世紀型教育を創る会」の活動の中で、私がずっとこだわってきた新しい教育についての考えをまとめた本です。このブログでお話してきたことも随所で触れておりますので、ぜひ手にとっていただければ幸せです。
そんなわけで今回は、2020年に予定されている大学入試改革について改めて考えてみたいと思います。
そもそもなぜ改革が必要なのでしょうか。学校という場所は、子どもたちが将来生きていく上で必要になることを教えていく場所なわけで、もしそのことがしっかり機能しているのであれば、大学入試改革など必要ありません。改革が必要になるのは、現在の入試制度が時代に合わなくなっていて、このままだと学校本来の機能が働かなくなる危険性があるからです。
そこを見落として、やれアクティブラーニングがどうだとか、大学入試制度はこうあるべきだといった議論をしても意味がありません。大事なことは、未来の子どもたちが生きていくための学力をどう育成するかということでしょう。
もうすでに、グローバル化によって従来の雇用システムは綻びを見せ始めていますし、今後は人工知能が人間の仕事を奪っていくのではないかと危惧されています。そういう時代に知識をたくさん頭に入れているかどうかを測るというのは、明らかに時代錯誤と言えるでしょう。子どもたちが活躍するのは、私たち大人が経験した時代とは全く異なる世界なのです。
欧米では、大学受験という概念はなく、大学進学準備、すなわちプレパラトリーコースとかプレップスクールと表現します。大学できちんと学んでいくための素地を作るという目的が明確で、ここでいう「準備」には、知識だけではなく、学ぼうとする意欲や好奇心、そして他の人と協働するスキルなどといった意味合いも含まれてきます。
日本ではともすると、大学受験というただ一点を突破するためだけに、集団内での位置を上げる競争に終始し、人生のベースとなることが学べない、あるいは軽視されてきたのではないでしょうか。
そのような大学受験を前提とした在り方は、日本でしか通じない「ガラパゴス化」の典型です。学校、受験予備校、そして大学という「ガラパゴス・トライアングル」とでも呼ぶべき日本の古い仕組みを破壊して、新しい学びにシフトしていこうという思いで本を出させていただきました。
大学入試改革の議論を通して、様々な教育機関が変化の兆しを見せ始めてきたのですから、その動きを応援して、大きなトレンドにしていきたい。いよいよ本当の学びを実践していく時代がやってきたのだという思いです。