前回のブログ-23で述べたように、高度情報通信ネットワーク社会構築に向けた検討がIT戦略本部の下で進められるようになり、その中での議論に基づき、2013年には世界最先端IT国家創造宣言が出されました。この創造宣言に基づいて、IT利活用により日本が目指すべき社会像が示され、その実現に向けて、どの府省庁が、いつまでに、具体的に何を実施するのかが短期(2013年度―2015年度)、中期(2016年度―2018年度)、長期(2019年度―2021年度)に分けて、工程表としてまとめられました。これが「世界最先端IT国家創造宣言 工程表」です。この工程表については、どの府省庁が、これまで何に取り組み、今後、いつまでに、何を実施するのかなどについて年度の進行と共に毎年見直しが行われています。
その工程表には各府省庁に跨る大きな3つの重点項目があります。その中で、重点項目3として”超少子高齢化社会における諸課題の解決”という項目があり、その中は更に、
(1)ビッグデータを活用した社会保障制度の変革、
(2)マイナンバー制度等を活用した子育て行政サービスの変革、
(3)IT 利活用による諸課題の解決に資する取組、
と3つに分かれています。この中の(3)は更に4つの小項目:
①産業競争力の強化、
②地方創生の実現、
③マイナンバー制度を活用した国民生活の利便性の向上、
④安全で災害に強い社会の実現、
から成っています。
①産業競争力の強化は広い範囲に及びますが、安全運転支援・自動走行システムがここに含まれています。そこでの2020年の目標は、「世界一安全な道路交通社会、渋滞の大幅削減、交通事故死者2,500人以下の達成」であり、更に完全自動走行システムに向けた社会のあり方(ニーズ、ビジネスモデル等)、制度面等の検討も進めるとされています。
世界最先端IT国家創造宣言では、上記のような目標を定めると共に、さらにその先に係る目標の達成も視野に入れつつ、官民が密接に連携しつつ取り組むことが想定されていました。その趣旨に基づいてIT総合戦略本部の中の新戦略推進専門調査会の下に設けられた道路交通分科会で検討が進められたのが官民ITS構想・ロードマップです。
ITSとはIntelligent Transport Systems、すなわち高度道路交通システムのことであり、人と道路と車両とを高度な情報通信技術で繋いで一体のシステムとして捉えたものです。これにより、道路交通の安全性、輸送効率、快適性は飛躍的に高められると考えられます。全く新しい道路交通システムといえるでしょう。
現在の日本の自動車産業は世界の最先端を行く巨大産業です。この地位を自動運転システムが実用化される時代になっても引き継ぐべく、その技術開発に遅れをとらないように国レベルでも種々の施策が展開されています。自動運転の実用化は何時になるのでしょうか?官民ITS構想・ロードマップでは低い自動化レベルから最終的な完全自動運転システムに至るまで、その達成年度がレベルごとに明示されています。
官民ITS構想・ロードマップの詳しい中身については次回に取り上げることにします。
図は現在までに作成が進んだATOMの写真です。左右の手と足が完成したところです。まだまだ全体像は見通せませんが、期待を持ってお待ち下さい。