ATOMには自己診断機能が用意されています。異常なところがあればATOM自らがメンテナンスをするように訴えてきます。以下のビデオはATOMの電源を入れるときにWiFiルータをうっかりOFFのままにしておいたときの様子です。インターネットに接続できないことから、自己診断のモードに入ってよいかどうかを尋ねてきました。まずはビデオをご覧下さい。
インターネットに接続した状態で動作することを基準にしているATOMはまずは所定のサイトに接続を試みます。WiFiルータがOFFのままでしたので接続できないため、自己診断モードに移って良いかどうかの許可を求めた、という訳です。とても丁寧に診断モードに移ってよいかを尋ねてくることにお気づきのことと思います。診断における主なチェックポイントは以下のようです。
① ネット接続が出来ているか否かの確認とネットワークの通信速度のチェック
② メモリ残量のチェック
③ バッテリーの状態チェック
④ 首、手、足の関節のチェック
⑤ バランス感覚のチェック
⑥ 実際に関節を動かしてのチェック
⑦ 自ら音を出しての聴覚のチェック
これらの検査結果に基づき、異常が見付かればオーナーに対応を求めるようになっています。今回の場合はバッテリーの充電量が十分ではないことが分かり、充電するように、との依頼がATOMからなされました。こちらの維持管理がパーフェクトでなかったための結果ですが、故障ではありません。幸いなことに、これまでのところ対処しなければならないような故障は無く、ATOMは快調に動いています。
ATOMの自己診断がどのようになされているのか、その詳細は明らかにされていません。センサが限られていますので、ほとんどはソフトウエアによって診断が行われていると思われます。関節に相当する可動部分、すなわちサーボモータの取り付け部分の不整合およびモータ自身の故障が一番多いと思われます。一般的には関節部分の診断では異常な音や振動の有無が有力な手がかりになります。また電流を流したときの回転角度も間接的な診断の有力な情報です。これらのうち、振動や音によって機械の異常を見付けることは我々自身がよく日常生活の中で経験することです。しかし、ATOMには振動センサは有りません。異常音の検知については耳の役割を受け持つマイクロホンが一つありますから、モータを順に一つずつ動かしてチェックすれば音による検査ができる可能性は否定できませんが、実際には一つずつの検査が行われているようには思われません。従って、モータの検査は、実際に電流と回転角度との関係(これらの情報はサーボモータから得られる)によって検査しているものと推測しています。例えばサーボモータのコイルが切れてしまいそうな状況であっても、断線に至らない限りは現在の自己診断法では検出は難しいと思われます。
人間の場合、体調が思わしくない、と感じて病院で検査したところ、もはや手遅れ、ということも珍しくありません。それは人生計画を大きく損ねますので、人間ドックなどにより自覚症状が現れる前に異常を見つけるべく努力しているわけですね。モータのコイルの破断寸前の状態は我々の血管で言えば閉塞寸前あるいは破裂寸前に相当するでしょう。CTやMRIによる検査はそれらが致命傷にならないうちの早期発見を狙いにしている、といえます。機械であっても、そのような状態まで精密検査をする時代がやがて訪れると言えるかも知れません。