平成の時代に社会は物凄いスピードで変革してきました。平成の始め頃にはいわゆるスマホは無く、一世代前の携帯電話にカメラが搭載されたのが1999年(平成11年)です。Facebookは2004年(平成16年)、LINEは2011年(平成23年)にそのサービスが開始されました。iPhoneが発売されたのも2007年(平成19年)です。我々が便利に利用しているこれらのものは全て平成時代の、それも後半の産物ということになります。スマホと呼べるものが売り出されて20年位になりますが、この短期間での変化の大きさ・速さには驚くほどのものがあります。これからの変化は更に加速され、例えば20年後を予測することは最早不可能と言って良いでしょう。
皆さんが本校を卒業し、大学を経て社会人として大いに活躍する期間の大半が令和の時代になるでしょう。そして、2045年に到来すると言われる“技術的特異点(シンギュラリティ)”を働き盛りの社会人として経験することになるはずです。皆さんもこの言葉を聞いた事があると思います。現在、人工知能(AI)の進歩が著しく、広い分野で実用になりつつあり、かつ、その性能が急速に向上し続けています。このAIシステムは2045年頃にはその性能が大幅に進化して人間の能力をも凌駕するようになり、そのAIシステム自身がそれ自身よりも更に進化したAIシステムを生み出すようになると予測されています。それを繰り返していくことにより、究極的には人間の能力を遥かに超えるものが出来てしまう、という時代の到来が予見されます。発明は科学技術者の創造的発想の結果として生まれるものですが、その発明もAIシステムによってなされるようになると考えれば、それはこれまでの技術的な進化の様相を完全に覆す時代に突入することを意味します。ということから技術的特異点と言われているわけです。皆さんはその時代を生き抜くことになります。
実際にどのような社会になるのか、具体的に想像することは難しいことです。ただ、少なくとも、これまで社会で活躍するために求められて来た資質・能力に関しては大きく変わることは間違いありません。では、どのよう資質・能力が求められるのでしょうか?少なくとも、これまで重要視されて来た既存の知識や技能を習得するだけで十分かといえば、それだけではこれからの社会を生き抜くことは難しい、といえます。良く言われることですが、「自ら疑い、考え、調べ、判断し、他の人と協働して課題を解決していく力」、別の言葉で表現すれば、教わる教育で培われる能力ではなく、自ら学ぶ教育で培われる“創造力”こそこれからは重要なのです。大学の入学試験においても、単に知識を問う問題から、そのような能力を測る問題へとシフトして行きつつあります。その理由が、シンギュラリティの到来を見据えた将来への備えであると言っても良いと思います。図はこれから起こる教育のパラダイムシフトを示したものです。
皆さんには、シンギュラリティを迎える時代において力強くその時代を牽引する中核を担う人に育っていって欲しい、と思っております。本校における教育には、その新しい時代に求められる資質・能力の基礎をしっかりと固めるためのメニューが用意されております。本校固有のサイエンス科やプロジェクト科などはその代表的なものですが、アクティブ・ラーニングの先を行く“ディープ・ラーニング”、“ダイバーシティ”、さらには“グローバル”をキーワードとする本校の教育の3本柱は、これから到来するシンギュラリティの時代を力強く生き抜くためのしっかりとした基盤を育む教育、すなわち、自ら学ぶ教育です。本校での教育に全幅の信頼を懐き、日々、学業と部活に集中力をもって取り組んでいって下さい。それが皆さんの将来を明るくする最強の手段と思います。
(2019年5月8日の朝礼での内容に加筆)