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小畑校長ブログ【ATOM】50 ビッグデータの独占と規制

DATE : 2019/9/18

AI(人工知能)システムの開発には学習用の巨大なデータが必要です。それによって開発されるAIシステムは人間をも超えるものになる時代が到来しようとしています。

 

国の在り方はその時代の産業技術に大きく左右されます。産業革命を契機とし、生産財を独占するような資本家が現れ、圧倒的多数の労働者を支配するという負の部分が生まれました。その社会的矛盾を解決し、すべての人の自由と基本的人権を保護する方向での社会改革の取り組みは今でも続いていると言えます。

 

現状のままではAIシステムを独占する者が出現し、国をも支配する可能性があるとして、今からその対策を講じる必要性を指摘する声があります。AIシステムを独占する者を過去の巨大な資本家の出現として置き換えて考えれば、その影響がどのようなものかを推測することができます。AIシステムの独占は、大胆に単純化して言えばビッグデータの独占とイコールと言って良いでしょう。

 

ビッグデータの構築は簡単ではありません。例えば顔認識のAIシステム開発を考えてみましょう。開発には膨大な数の顔写真が必要です。何故なら、AIシステムは学習に用いたデータの規模に応じてシステムの性能が左右されるからです。日本でそのようなシステム開発を進めようとした場合、一人一人からAIシステム開発のために顔写真を使うことを書面で了解をとる必要があります。そのような手続きを、何十万、何百万という人に対して実行することは簡単なことではありません。個人情報の扱いに極めて神経質な日本にはAIシステム開発に適した土壌は無い、と断定して良いのかもしれません。

 

中国では、町中に張り巡らされている監視カメラの画像を本人の許可無しで自由に使えるようです。日本では、犯罪捜査を除くと、自由な利用は許されておりません。昨年の夏に中国の新疆ウィグル自治区に行った時のことです。既に“中国の西の果て”とも言えるウィグル自治区の首都であるウルムチまで新幹線が伸びていました。三蔵法師の足跡を訪ねる旅行でしたが、ウィグル自治区で3度ほど新幹線に乗りました。びっくりしたのは、改札時にパスポートの提示と顔写真を撮影するゲートを3度も通過するのです。私の顔写真は中国のAIシステム開発に使われているのかも知れません。何れにせよ、中国はビッグデータ大国です。2030年には米国を追い越し、理論、技術、応用面を含め世界トップになるべく、国を挙げて研究開発が進められています。

 

ビッグデータの収集の巨人は国とは限りません。GAFA,すなわちGoogle、Amazon.com、Facebook、Apple Inc.の4つの巨大なIT企業がそれです。GAFAは我々の毎日の生活に深く入り込んでいます。Googleを使った検索は一日に何十億件にも上るそうです。それらの統計処理から、国、地域、あるいは個人として、何を考え何を欲しているのか心の内までを見通すことができるのです。先日、温水洗浄便座が故障したので、どの機種に買い替えようかとGoogleで何度か検索したのですが、それとは無関係の情報収集をしても広告欄は温水洗浄便座でした。便座をPRする電子メールまでが送られて来たのにはびっくりでした。GAFAのG以外の会社も同様であり、我々の個人レベルの毎日の行動から嗜好まで探りつつあるのです。GAFAが集める情報は巨大であり、他の追従を許さないと言えます。

 

商品のPRに情報を活用するレベルであれば実害は無いかも知れませんが、情報の使い方には予測を超えるものがあります。しかも情報が一部に独占される状況は益々強まるでしょう。その危険性を考え、収集した情報の使い方に制限を設けよう、という議論が始まっています。私達もこの問題について真剣に考える必要がありそうです。

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