先日、久しぶりに家の近くのユニクロで買い物をしたときのことです。バスケットに買うものを入れてレジに向かったのですが、以前と雰囲気が全く異なっているのです。レジの順番を待つ人の列が無く、買い物客それぞれが機械を相手に清算処理をしているではありませんか。レジ係がいないのです。空いているカウンターに向かうと、そこへ一人の店員が近づいてきて、ハンガーを取り外してバスケットごとここに置けば合計金額が表示されます、とのこと。実際、所定の場所にバスケットを置くと、一瞬で合計金額が表示されました。そのスピードはある種の感動を覚えるほどでした。従来はレジ係が一つ一つの商品の値札を取り出し、それに印刷されているバーコードをリーダーで読み取っていたのが、バスケットに乱雑に重なったまま入っていても、一瞬ですべての商品が識別されるのです。処理時間の大幅短縮だけでなく、レジ係も消えた現実を目にしたのでした。
このような感動的な技を可能にする優れもの(?)がRFID (Radio Frequency IDentifier) タグと呼ばれるものです。RFIDのことは前から図書館で利用されていることは知っていましたが、RFIDの実物を見たことはありませんでした(借りた本をばらすわけにはいきません)。興味が湧いたので、帰宅して直ぐに値札を水にしばらく浸け、なんとか取り出したタグを図に示します。薄いアルミ箔のようで、ぺなぺなです。長さも人差し指ほどで、これまでの値札にすっぽりと収まる大きさです。
RFIDタグは一種の電子回路です。詳しい仕様は公開されておらず、シルエットからの推測が入りますが、面積の大部分を占める左右の対称形部分がアンテナで、中央部分に小さな半導体チップがあるはずです。最小限ですが情報の授受ができるコンピュータの機能を持っているのです。外部から電波を充てると、アンテナには交流電流が発生します。それを整流すれば、コンピュータの直流電源になります。読み取り機からRFIDタグに「商品情報を送れ」と電波で指令を出せば、コンピュータがメモリに記録された商品情報をアンテナ経由で電波に乗せて送り返すことができます。それを検知すればバーコードを読んだのと同じ情報を読み取ることができる、というわけです。バーコードと比較したとき、電波が届けば重なっていても問題なく、さらには支払い済の情報をメモリに書き込むこともできる、というバーコードには無い利点があるわけです。多分、店の出口のところでは会計処理済かどうかのチェックもしているものと思われます。
機能が限定されているとはいえRFIDは一種のコンピュータですが、何と一つ10円以下とのこと。商品棚に並んでいる商品の数の確認も、これまでは店員が逐一カウントしていたわけですが、それがリーダーを棚に向けて全体をスキャンするだけで済みます。削減される人件費を考えれば十分にペイする、ということでしょうか。
技術の進歩による人減らしは身近になってきました。コンビニでも無人店が試験運用に入っています。ロボットやAIの進歩による人減らしもこれからどんどん増えていくでしょう。次の世代を担う若人は機械化しにくい能力でかつ自分の個性・才能に合うものを見極め、それを身に着け伸ばすことが重要です。