2020年は新型コロナ・ウイルス感染症の第一波、第2波と続き、今は第3波のまっただ中です。感染症の勢いは弱まるどころか強まる一方ですね。コロナで始まりコロナで終わる一年となりました。2021年1・2月の高校入試、2月の中学入試もコロナ禍での受験となることは間違いありません。受験生の皆さんはコロナに振り回されての受験勉強を強いられ、これまで大変でしたね。そして受験を控えた今も、大きな不安の中にあるのではないでしょうか。
日本人にとって2020年を特色付けるものの筆頭といえばオリンピックであったはずです。それが新型コロナ・ウイルス感染症の影響で一年延期となり、それだけでなくあらゆる分野のイベントが中止に追い込まれました。学校生活においても例外ではなく、生徒の皆さんが楽しみにしていたものの多くが中止になってしまいました。そんな中で正に快挙と言え、日本中が、いや世界中(と言っても良いかも知れません)が沸いた出来事がありました。「はやぶさ2」によるサンプル・リターンの成功です。これは、コロナ禍の中で一際明るく輝いた出来事といって良いでしょう。暗闇の中に光明を見出した出来事と言えます。
今回の「はやぶさ2」が2回目のサンプル取得にチャレンジする場面で注目すべきことがありました。初回のタッチダウンは見事に成功しましたね。これだけでも快挙と言えます。目的の半分を達成したとも言え、それで帰還しても十分とも言えるものでした。そのため、二回目にチャレンジすべきかどうかが大問題になったのです。二回目のチャレンジはリスクが大きく、必ず成功するという保証はありません。もし失敗すれば初回の成功も無に帰します。巨費を投じて得られた成果が無に帰することは絶対に避けるべきだ、という意見が湧き上がったのです。
こんな状況下で皆さんならどうされますか?「はやぶさ2」の開発者であれば折角時間をかけて準備してきたものでもあり、是非チャレンジしたい、という気持ちが勝ります。これは当然とも言えます。一方、国や国民に対して責任を負うJAXAの上層部は、もし2回目が失敗して全てが無になるリスクを考えれば、既に得られた成果を大切にして帰還させるべき、という方向になりがちです。これも十分に理解できる考えです。ここからは私の推測が入りますが、JAXA内は二つに割れ、外部者には伺い知れない壮絶な戦い(?)が始まったようです。しかし目的完遂派は、早期帰還派が心配するあらゆるリスクに対して綿密なシミュレーションに基づきパーフェクトともいうべき対応策を確立したのです。科学技術的にしっかりとした根拠に基づくリスク回避策が早期帰還派をも納得させ、最終的なゴーサインが得られたのでした。この過程こそ、生徒の皆さんが社会人となって取り組む仕事の中で目的達成に立ちはだかる大きな壁を乗り越える場合の重要なヒントになるものと思います。早期帰還派があればこそ二回目のチャレンジが成功した、とも言える訳であり、両者の前向きな戦いが重要な役割を果たしたのです。あらゆる角度から検証した上での合理的な決断こそが成功するか否かの鍵、と言えるのではないでしょうか。
備えあれば憂い無し、といいます。「はやぶさ2」の成功は正にその良い例と言えるでしょう。受験生の皆さんも「必ず“かえつ”に入る」という意気込みで最後の頑張りに入っていることでしょう。そうです、万全の備えこそ最も頼りになるものです。小惑星リュウグウの岩石を入れたカプセルが大気圏突入時に放った光はその成果を高らかに謳っているように見えました。生徒の皆さん、残された期間に最善を尽くし、2月の入学試験では是非とも心底からの慶びに満ちた笑顔で輝いて下さい。